イシューを尋ねるのは重要だが、良い質問の条件はそれだけではないという話

質問箱()で5,500件もの質問に回答しながら、なんとなく考えていたもの。

なぜ良い質問をする必要があるのか

簡単に言えば、質問の質というのは、質問者のセンスをダイレクトに表すからである。良い質問をできる人はセンスが良いと思われるし、微妙な質問をしてしまうとセンスが悪いと思われてしまう。

ここで使う表現はセンスがふさわしいと思っている。知識や学力の問題ではなさそうだ。(限度はあるとしても)知識が豊富な人でもセンスの悪い質問をする人はいるし、初学者でもキレの良い質問をできる人もいる。

良い質問とはどのようなものだろうかについて、少し考えてみたのでまとめたい。

要素1「それを聞いてどうするの?」と言われない

安宅氏の「イシューからはじめよ」という書籍がある。この本には、質の高い問い(イシュー)とは何かが書かれている。要約するとこうだ。

付加価値を生むためには、解決する意味のある問題(イシュー)を解決しなくてはならない。 世の中には解決する意味のない問題も多数存在しており、それを解決しても付加価値は生まれない。

良い質問であるための1つの要素として、イシューを尋ねるというものがあると思う。ただし、イシューであることはセンスの良い質問であるための必要十分条件ではない。あくまでも要素の1つだろう。

イシューでない質問を尋ねると「それを聞いてどうするの?」という反応をされる可能性が高い。これを避けるとよい。

要素2「どうして私に聞くの?」と言われない

少し考えれば当然のことなのだが、回答者選びはセンスの良い質問において非常に重要だ。

醤油ラーメンと塩ラーメンのどちらが好きか?という質問は誰に聞いても問題ないが、専門的な質問は専門家に聞かないといけない。

たとえば、よく分からないビジネス系YouTuberに投資の質問をするのはセンスがないのだ。質問の文面がどれほど優れていたとしても、回答者選びが間違っているとセンスがないと思われてしまう。

回答者から「どうして私に聞くの?」と言われない質問をするのが良い。第三者から「その人に聞いても仕方ないでしょ」と言われないようにする必要もある。

要素3「もっと早く聞いてくれ」と言われない

質問というのは、適切なタイミングで行う必要がある。

「最近PCを買い替えたんですが、これでよかったでしょうか?」では手遅れなのだ。センスの良い質問者となるためには、買い替える前に質問をしなければならない。

これくらいわかりやすいと笑い話なのだが、本人が手遅れだと自覚せずに質問をしているケースがある。特にキャリアの文脈でよく見られる。

例えば、「メーカーの営業職4年目です。投資銀行に転職したいのですが、どうしたらよいですか?」という質問は、センスのない質問だとみなされる。

もちろん、すごく遠回りをすれば書類選考くらいは通るようになるかもしれないが、「買い換えたPCがダメだといわれたので、もう一度買い替える」くらいの無駄がある。

要素4「ちゃんと調べた?」と言われない

良い質問をするためには、最低限の勉強や予備知識が必要だ。

例えば、「大学3年生です。金融の勉強をしているのですが、貸借対照表ってなんですか?」などである。いろいろ言いたいことはあるが、大学3年生になってそのレベルの質問をしていること自体が嘆かわしい。

そもそもググれば良いし、もう少し勉強をしてから質問をすべきだし、大人ならそれくらいのことは自分で解決してほしいのである。5-6歳の子供が、無邪気に日本語の意味を質問しているのとはわけが違う。

この要素で失敗してしまうと、質問者への評価が大きく下がる可能性が高いので、面接での逆質問などでは特に注意するとよい。

要素5「自分で考えてみた?」と言われない

要素1や要素4とも近い内容だが、良い質問であるためには、質問者の意見や仮説というものも重要である。

「簿記2級の資格を取得したら、就活で有利になりますか?」などが典型的である。自分が採用担当者だとしたら、簿記2級の資格を持っている候補者を優遇するだろうか?と自問してみれば、質問の大部分は解決するはずである。

よく自問自答をしてみたうえでの質問なのか、何も考えずに聞いているのかは、案外回答者からは明らかなものである。

良い質問とはいったい何なのか

それぞれの要素を満たす質問を考えていくと、おのずと良い質問像が浮き出てくる。

1 回答を得る意味のある質問を

2 適切な回答者に

3 適切な時期に

4 よく勉強をしたうえで

5 自分の意見や仮説を踏まえて

すればよい。このような質問をできれば、センスの良い質問者になれるのではないだろうか。

もちろん、ここに書いたこと以外の要素もあるだろうし、要素がわかればセンスの良い質問をできるかというと別問題である。

私もまた、質問力を鍛えていきたいと思う。